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「ひらがな学習」という贅沢

2015/03/09
同じ行為でも、取り方で、180度変わるものです。

私が月一度、ボランティアで訪問している東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に収容されていたAさんのお話です。

☆☆☆

「“ヒラガナ”というのを勉強し始めたんだ」。

Aさんは褐色の顔をしわくちゃにして笑いました。

Aさんは50代の男性。クルド人です。クルド人は主にトルコ、イラク、イラン、シリアの国境地帯に跨って住む中東の先住民族で、人口は約3000万人。「祖国を持たない最大の民」とも言われます。様々な国で迫害の対象となり、辛い時代を生きてきました。

Aさんは約10年前、トルコから日本に難民として逃げてきました。

左太ももに斧で切りつけたような深い傷。首には焼けただれた跡が残ります。Aさんは言います。「ここにトルコで痛めつけられた証拠書類だってあるんだ。なんで日本では難民認定が下りないんだ」。

日本の難民認定の低さは国際的にも非難の的です。たとえ認定されても、それまでは入国管理局に収容されます。日本において難民申請希望者は他国のように保護の対象ではなく、隔離の対象です。犯罪者のように房に押し込まれ、いつ出てこられるかもわかりません。

「おれは1年間いたよ。短いほうだがね」。Aさんは寂しそうに口をゆがめました。

Aさんは、クルド人仲間や日本人有志の支えで最近、やっと生活が落ち着きました。4畳半のアパートに一人暮らしです。

「ごろんと寝られるところがあって、3食自由に食べて、誰からも追いかけられないで。これ以上の幸せはないね」

そしてAさんは、やっと日本語の勉強を始めました。必要な日本語は話せるものの、文字はほとんどわかりません。まずは“ひらがな学習”です。「勉強っていうのは、日常に何も心配することのない人が行う、究極のぜいたくだよ」。Aさんは言います。

翻って日本はどうでしょう。子供たちはすすんで学習をしているのでしょうか?資格やスキルアップを目指す大人は自分の能力が伸びることに喜びを感じているのでしょうか?

「勉強をさせられている」。少しでもそう思ったら、Aさんの言葉を思いだしてください―“勉強は究極のぜいたく”―。自らにとって当たり前のことでも、視点を変え、俯瞰すれば、この上なく愛おしい日常の一コマになるのではないでしょうか。


S.N.
12:14 その他 | コメント(0) | トラックバック(0)
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